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「よく食べてよく水を飲むようになったけど、これって良いこと?」「お腹がぽっこり膨らんできた」
こうした変化を「元気な証拠」と好意的に捉えてしまいがちですが、実はクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)という病気のサインである可能性があります。老犬に多く見られる内分泌疾患のひとつで、症状がゆっくり進行するため発見が遅れやすい病気です。この記事では、クッシング症候群の症状・原因・治療法を詳しく解説します。
クッシング症候群とは
クッシング症候群は「副腎皮質機能亢進症」とも呼ばれ、犬の内分泌疾患(ホルモンの病気)の中で最も発生が多い病気です。副腎皮質から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰に分泌されることで、さまざまな症状が現れます。
副腎は腎臓のすぐ側にある小さな臓器で、体に必要な様々なホルモンを分泌する重要な内分泌器官です。コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれ、炭水化物・脂肪・タンパク質の代謝をコントロールする体に必要不可欠なホルモンですが、過剰になると体に悪影響を及ぼします。
クッシング症候群の原因
原因は大きく3つに分けられます。
① 下垂体性(最も多い)
脳の下垂体という内分泌器官に腫瘍化などの異常が生じ、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌され、その結果副腎皮質ホルモンが多量に分泌されることで発症します。犬ではこの原因での発症が最も多いとされています。
② 副腎性
副腎自体の腫瘍化により副腎皮質ホルモンが多量に分泌されることで発症します。
③ 医原性
アトピー性皮膚炎や自己免疫性疾患の治療でステロイド薬を長期間使用し続けた場合に、クッシング症候群と同じような症状が現れることがあります。この場合、副腎の機能自体は正常ですが、ステロイド薬の影響で副腎が萎縮し、機能低下している状態になっています。
クッシング症候群の症状
- 多飲多尿(よく水を飲み、おしっこの量が増える)
- 多食(食欲が増える)
- 腹囲膨満(お腹が常に張っている)
- 左右対称性の脱毛
- 皮膚が薄くなる(菲薄化)
- パンティング(呼吸促迫)
- 皮膚の石灰化や感染症の増加
- 筋肉量の減少
注意すべき点は、「よく食べてよく水を飲む」という症状が好意的に解釈されやすく、病気のサインだと認識されにくいことです。さらに加齢に伴ってゆっくりと進行するため、病状がかなり進むまで気づかれないケースが少なくありません。
診断方法
多飲多尿・皮膚病変・腹囲膨満などの特徴的な症状に加え、血液検査のスクリーニングでALPという数値が高い場合、クッシング症候群を強く疑います。確定診断のためにACTH刺激試験(副腎皮質刺激ホルモンを注射して前後のコルチゾール数値を測定する検査)が行われ、この検査で約80%が診断できるとされています。その他、一般血液検査・尿検査・腹部超音波検査が行われ、必要に応じてCT・MRI検査が行われる場合もあります。
治療法
クッシング症候群の原因によって治療方針が異なります。投薬による内科治療が一般的で、副腎からのホルモン分泌を抑える薬剤(トリロスタンなど)が使用されます。副腎腫瘍の場合は外科的な摘出が検討されることもあります。医原性の場合は、原疾患の治療方針を見直しながらステロイドの減量を検討しますが、自己判断での断薬・減薬は急な副反応を引き起こす危険があるため、必ず獣医師の指示に従ってください。
クッシング症候群は完治が難しい病気であり、多くの場合は治療によって症状を管理しながら経過を遅らせることが治療の目標になります。
放置するとどうなる
クッシング症候群のコントロールが不良な状態が続くと、糖尿病・膀胱炎・皮膚炎などにかかりやすくなります。病状が進むにつれてふらつき・発作・失明などの神経症状が出ることもあり、最悪の場合は肺血栓症による呼吸困難で突然死することもあるとされています。
早期発見のために
クッシング症候群には明確な予防方法はありませんが、早期発見によって適切な管理を始めることが重要です。「よく食べる」「よく水を飲む」という変化を単なる元気の良さと捉えず、量が明らかに増えている場合は動物病院での検査を検討してください。7歳を過ぎたら定期的な血液検査を受けることが早期発見につながります。
まとめ
クッシング症候群は老犬に多い内分泌疾患で、症状がゆっくり進行するため発見が遅れやすい病気です。多飲多尿・多食・腹囲膨満・脱毛などの症状が見られたら、自己判断で「元気だから大丈夫」と決めつけず、動物病院で検査を受けてください。
治療によって症状を管理しながら、愛犬のQOLを維持していくことが大切です。気になる症状があれば、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。

