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「最近うちの子が太ってきた」「寝てばかりで元気がない」「毛が抜けて生えてこない」
こうした変化を「年のせい」と思いがちですが、その背景に甲状腺機能低下症というホルモン疾患が隠れていることがあります。中高齢犬に多く見られる病気で、適切な治療によって愛犬が若返ったように元気を取り戻すケースも多く報告されています。この記事では、老犬の甲状腺機能低下症の症状・原因・治療法を詳しく解説します。
甲状腺機能低下症とは
甲状腺は喉に近い気管の外側に左右ひとつずつある臓器で、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)という2種類のホルモンを作っています。これらの甲状腺ホルモンは、全身の代謝機能(エネルギーの産生、タンパク質や酵素の合成、炭水化物や脂質の代謝などの機能)を調整する重要な役割を担っています。
甲状腺機能低下症は、この甲状腺ホルモンが不足することで全身の代謝が低下し、さまざまな症状が現れる病気です。人間にも似た病気があり「橋本病」と呼ばれています。
かかりやすい年齢・犬種
自然発症の甲状腺機能低下症は、一般的に中年齢〜高齢(6歳以降)の犬で多く見られます。7歳以上の中型犬〜大型犬でよく見られますが、高齢の小型〜中型犬でもよく見られる病気のひとつです。
かかりやすい犬種としては、ビーグル、シェルティー、ゴールデン・レトリーバー、ハスキー、ドーベルマン、トイ・プードル、柴犬、ミニチュア・シュナウザー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ボクサー、ダックスフンドなどが挙げられます。これらの犬種は他の犬種と比較して若年で発症する傾向にあるとされています。
甲状腺機能低下症の原因
犬の甲状腺機能低下症のほとんどは、甲状腺組織そのものの減少(原発性)によって起こります。主な原因として以下が挙げられます。
- リンパ球性甲状腺炎(自己免疫疾患と考えられている)
- 特発性甲状腺萎縮
- 甲状腺腫瘍
稀に、脳下垂体や視床下部に原因がある二次性・三次性の甲状腺機能低下症もありますが、犬の場合は非常にまれです。
甲状腺機能低下症の症状
代謝全体が低下するため、ゆっくりとした変化として以下のような症状が現れます。
- 太りやすくなった(体重増加)
- 元気がなく、寝てばかりいる(活動性の低下)
- 毛艶が悪くなる・毛が抜けて生えてこない
- 寒さに弱くなる
- 動きが鈍くなる
頻度は低いものの、顔面神経麻痺や前庭障害などの末梢神経障害が出ることもあります。ごくまれに、虚脱(極度の脱力状態)・低体温・粘液水腫性昏睡といった重篤な症状が発生することもあります。
これらの症状は「なんだか急に老け込んでしまった」という印象として現れることが多く、単純な老化と見分けがつきにくい点が特徴です。
診断方法
甲状腺機能低下症は他の病気と症状が似ているため、総合的な検査で診断します。血液中の甲状腺ホルモン(T4・FT4など)の濃度測定が基本となり、必要に応じて甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)の値も確認します。複数の検査結果を組み合わせて総合的に判断されます。
治療法
診断が確立された場合、薬物療法によって管理されることが一般的です。
甲状腺ホルモン補充療法
獣医師が処方する甲状腺ホルモン(レボチロキシンなど)を食事とともに投与します。ホルモン補充療法により体内のホルモンレベルが正常化され、症状が改善していきます。
定期的なモニタリング
獣医師が甲状腺ホルモンレベルを定期的にチェックし、適切な投与量に調整していきます。
食事療法
必要に応じて、アミノ酸・ヨウ素・ビタミン・ミネラル・抗酸化物質などを含んだ健康的な食事を組み合わせることがすすめられます。
治療によって、太りやすかった愛犬の体重が改善したり、活気がなかった子が本来の元気を取り戻したりするケースが多く見られます。足腰の問題や糖尿病のコントロールが難しかった犬が、甲状腺機能低下症の治療によって回復することもあるとされています。
治療しない場合のリスク
甲状腺機能低下症を治療しない場合、体内のほぼすべての臓器が甲状腺ホルモンと代謝の影響を受けるため、愛犬の寿命を縮めることにつながります。未治療の場合、高コレステロール、免疫機能の低下、心拍数の低下、ふらつき・首の傾き・発作などの神経系の症状が現れることがあります。
まとめ
老犬の甲状腺機能低下症は、体重増加・元気のなさ・毛艶の悪化といった「老化」と見分けにくい症状で現れます。しかし適切な治療によって、愛犬が本来の元気を取り戻すことができる病気です。
「最近急に老け込んだ」と感じたら、単なる老化と決めつけず、一度動物病院で血液検査を受けてみることをおすすめします。

