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「最近うちの子、急に太ってきた」「毛が抜けて生えてこない」「以前より元気がなく、寝てばかりいる」――こうした変化を「年をとったから仕方ない」と思っていると、実は病気が隠れていることがあります。そのひとつが「甲状腺機能低下症」です。体の代謝全体をコントロールする甲状腺ホルモンが不足することで起こるこの病気は、老犬に限らず中高齢の犬に多く見られます。適切な治療を続けることで、症状が大きく改善するケースも多い病気です。この記事では、犬の甲状腺機能低下症の症状・原因・治療について解説します。
甲状腺機能低下症とは
甲状腺は首の下部にある小さな臓器で、体内の代謝機能(エネルギーの産生・体温調整・心拍数・皮膚や被毛の健康・消化機能など)をコントロールする甲状腺ホルモン(T3・T4)を分泌しています。このホルモンが不足した状態が甲状腺機能低下症です。ホルモンが足りなくなることで、体全体が「スローモード」になり、さまざまな症状が現れます。
発症しやすい犬種・年齢
甲状腺機能低下症は5歳以上の中〜高齢の犬に多く見られますが、1歳から15歳以上まで幅広い年齢で発症します。発症しやすい犬種として、トイプードル・柴犬・ミニチュアシュナウザー・ビーグル・シェットランドシープドッグ・アメリカンコッカースパニエル・ゴールデンレトリーバー・ドーベルマン・ダックスフンドなどが挙げられています。
主な原因
犬の甲状腺機能低下症の原因の90%以上は、甲状腺組織そのものが破壊されることによる「原発性甲状腺機能低下症」です。主に2種類の病態があり、ひとつは自己免疫反応によって自分の甲状腺組織を壊してしまう「リンパ球性甲状腺炎」、もうひとつは原因不明のまま甲状腺が萎縮していく「特発性甲状腺萎縮」です。稀に、脳の下垂体や視床下部の腫瘍・外傷、甲状腺の腫瘍などが原因となるケースもあります。
見逃しやすい症状
甲状腺機能低下症は症状がゆっくりと進行するため、「老化のせい」と見過ごされやすいのが特徴です。次のような変化が複数重なっている場合は、この病気の可能性を疑ってみましょう。
- 体重増加・肥満(食事量や運動量が変わらないのに太ってきた)
- 元気の低下、無気力、疲れやすくなった
- 被毛の変化(毛が抜けやすい・毛艶が悪くなった・左右対称に毛が薄くなった)
- 皮膚が乾燥している、皮膚が厚くなってきた
- 寒がりになった
- 心拍数が遅くなった、ぼんやりしている
- 神経系の症状(ふらつき・顔面麻痺など)が見られることもある
特に「食べていないのに太る」「毛が左右対称に抜ける」「急に老け込んだ印象になった」という変化が重なっている場合は、動物病院で血液検査を受けることをおすすめします。
診断方法
甲状腺機能低下症の診断は、血液検査による甲状腺ホルモン(T4・FT4など)の測定が中心となります。ただし、他の病気や薬の影響でホルモン値が低く出ることもあるため、症状・検査値・犬種・年齢などを総合的に判断して診断されます。症状が似ている他の病気(クッシング症候群など)との鑑別が必要な場合もあります。
治療と日常管理
甲状腺機能低下症の治療は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補う「ホルモン補充療法」が基本です。レボチロキシンという甲状腺ホルモン製剤を毎日決まった時間に服用します。多くの場合、治療を始めてから数週間から数ヶ月で元気や被毛の状態が改善し、「若返った」と感じられるほど変化することもあります。ただし、治療は甲状腺機能そのものを回復させるものではなく、症状を管理するためのものです。調子がよくなっても自己判断で薬をやめたり量を変えたりすると症状が再び悪化するため、獣医師の指示に従って継続的に服用することが大切です。また、定期的な血液検査でホルモン値を確認し、薬の量を調整していく必要があります。
他の病気に隠れて見つかることも
甲状腺機能低下症は、他の病気の治療をしていてもなかなか改善しない場合に、背後の病気として発見されることがあります。糖尿病のコントロールが難しい犬が、甲状腺機能低下症の治療後に改善したケースも報告されています。持病の管理がうまくいかないと感じている場合は、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
まとめ
犬の甲状腺機能低下症は、体の代謝全体を低下させる病気で、急な体重増加・元気の低下・被毛の変化など「老化」と混同されやすい症状が特徴です。適切な治療を続けることで症状が大きく改善するケースも多いため、「年だから仕方ない」と決めつけず、気になる変化があれば早めにかかりつけの獣医師に相談し、血液検査を含む健康診断を受けるようにしましょう。

