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「突然、愛犬が倒れて全身を震わせ始めた」「足をバタバタさせて意識がない様子だった」――てんかん発作を目の前で見た飼い主さんは、パニックになってしまうのは無理もありません。犬のてんかんは老犬にも多く見られる神経系の病気で、突然の発作は飼い主さんにとって非常に心配な経験です。しかし、発作中の正しい対処法と、発作後の適切な対応を事前に知っておくことで、落ち着いて対応できるようになります。この記事では、老犬のてんかんの原因・症状・発作時の対処法・治療について解説します。
てんかんとはどんな病気か
てんかんは、脳の神経細胞が突然異常に興奮することで、けいれんや意識障害などの「発作」を繰り返す病気です。通常、脳の神経細胞は規則正しいリズムで電気的に活動していますが、何らかの原因でこのバランスが乱れると、脳が過剰に興奮してけいれんなどの発作症状が現れます。
老犬のてんかん:若い犬との違い
若い犬(1〜5歳)のてんかんは「特発性てんかん(原因不明・遺伝的要因)」が多いのに対し、老犬(7歳以上)では脳腫瘍・脳炎・慢性腎臓病・肝臓病・低血糖・電解質異常など、「症候性てんかん(別の病気が原因)」が多く見られます。そのため、老犬でてんかん発作が起きた場合は、発作の治療だけでなく、背景に隠れている病気がないかを調べることが重要です。
てんかんの原因(老犬に多いもの)
- 脳腫瘍:老犬でてんかんが初めて発症した場合、脳腫瘍の可能性を疑う必要があります
- 脳炎(ウイルス・細菌・免疫介在性など)
- 慢性腎臓病・肝臓病:老廃物が脳に影響を与えることがある
- 低血糖:特に小型犬で起こりやすい
- 電解質異常(ナトリウム・カルシウムの異常など)
- 甲状腺機能低下症・クッシング症候群などのホルモン疾患
- 特発性てんかん:原因が特定できないもの
てんかん発作の主な症状
てんかん発作にはいくつかのタイプがあります。最も目立つのが「全般発作」で、次のような症状が現れます。
- 突然倒れ、全身をガクガク震わせる(けいれん)
- 足を泳ぐように動かす(パドリング)
- 口をクチャクチャする・よだれが大量に出る
- 意識を失ったようになる・呼びかけに反応しない
- 排尿・排便が伴うことがある
より軽度な「焦点発作(部分発作)」では、顔の一部が震える・片側の足だけがけいれんする・ぼーっとしているなど、一見してんかんと気づきにくい症状が現れることもあります。
発作前後に見られるサイン
発作の前後にも特徴的な変化が見られることがあります。
- 発作前(前兆期):急に不安そうにする・飼い主にくっついてくる・落ち着きなくウロウロするなど
- 発作後(発作後期):ぐったりしている・ぼーっとして反応が鈍い・しばらく歩き回る・一時的に目が見えなくなるなどの様子が数分〜数時間続くことがある
発作が起きたときの正しい対処法
発作中は非常に心配ですが、次のことを心がけましょう。
落ち着いて観察する
発作中は愛犬本人は意識がない状態のため、痛みを感じていないことがほとんどです。飼い主さんが慌てて触ったり動かしたりするより、まず落ち着いて観察することが大切です。
周囲の危険物を取り除く
倒れた愛犬が家具の角や段差などにぶつかって怪我をしないよう、周囲の危険なものをそっと遠ざけましょう。
口の中に手を入れない
「舌を飲み込むのでは」と思って口に手を入れる方がいますが、これは危険です。発作中に嚙まれてしまう可能性があります。犬は舌を飲み込むことはありません。
発作の様子と時間を記録する
スマートフォンで動画を撮っておくと、動物病院での診断に大変役立ちます。また発作が始まった時間と終わった時間を記録しておきましょう。
5分以上続く場合はすぐに受診する
発作が5分以上続く「重積発作」や、30分以内に2回以上の発作が起こる場合は、脳に深刻なダメージを与えるリスクがあるため、すぐに動物病院に連れていきましょう。
発作後はそっと安静に
発作が終わっても、発作後期の間は無理に動かさず、暗くて静かな場所で安静にさせてあげましょう。しばらく反応が鈍くても、多くの場合30分〜1時間程度で落ち着いてきます。
診断の方法
老犬でてんかん発作が初めて起きた場合、原因を特定するために次の検査が行われます。血液検査・尿検査(腎臓・肝臓・血糖・電解質などの確認)、レントゲン・超音波検査(他の臓器の状態確認)、神経学的検査(神経の働きの確認)などが基本です。脳腫瘍や脳炎が疑われる場合はMRI検査が必要になることがあります。
治療の選択肢
てんかんの治療は、発作の原因・頻度・重さによって異なります。
- 原因疾患の治療:腎臓病・肝臓病・低血糖・脳炎など原因となる病気がある場合はその治療が優先されます
- 抗てんかん薬:発作を完全になくすことは難しくても、発作の頻度や重さをコントロールすることが目標です。フェノバルビタール・臭化カリウムなどが使われます。生涯にわたる服薬が必要なことが多く、定期的な血液検査でモニタリングが必要です
- 食事管理:血糖値の安定や肝臓・腎臓への負担軽減が発作のコントロールに役立つことがあります
日常生活での注意点
- 発作日誌をつける:発作の日時・長さ・様子を記録しておくと、治療効果の判断に役立つ
- 過度なストレス・疲労を避ける:ストレスや睡眠不足は発作を誘発しやすくする
- 入浴・水場には注意:発作中に溺れるリスクがあるため、水の近くでの一人での行動に注意する
- 抗てんかん薬を自己判断でやめない:急に薬をやめると重篤な発作が起こる可能性がある
まとめ
老犬のてんかん発作は突然起こるため、飼い主さんが慌ててしまうのは当然です。しかし、発作中は落ち着いて観察し、口に手を入れず、発作の様子と時間を記録することが最も重要な対処法です。5分以上続く場合はすぐに受診してください。老犬のてんかんは脳腫瘍や臓器疾患が背景にあることも多いため、初めて発作が起きた場合は必ずかかりつけの獣医師を受診し、原因を調べてもらいましょう。

